学生で個人事業主になるときに気になる疑問はたくさんあります。特に、税金や扶養などはお金が絡むこともあって、詳しく知りたい方が多いと思います。
この記事では、学生が個人事業主といて開業するときに気になる
などの疑問に答えます。
僕は、高校の頃に開業しており、今年で個人事業3年目となります。なかなかネットで参考になる情報が見つからず、とても苦労したので、ここで一気にまとめました。
なお、専門家ではありません。でも、できるだけ正確な情報をまとめたかったので、すべて国税庁など専門機関のホームページを根拠としました。リンクも参考にどうぞ。
学生が個人事業主になると扶養はどうなる?
学生が個人事業主になるときに、一番気になるかもしれないのが、
自分が個人事業主になったら、親の扶養から外れてしまうのではないか?開業しても親の扶養に入っていられるのか?
ということ。答えを言うなら、
個人事業主になったからといって、必ず扶養から外れるわけではない。扶養条件を満たせば、親の扶養に入ったままでいられる
です。これはきちんと理解できるまで、自分はかなり時間がかかりました。
扶養には2つあり、条件が異なる
まず、一般的にいう扶養は、実は2種類あります。
の2つです。どちらも多くのケースでは、学生なら親の扶養になっている場合が多いと思います(例外あり)。
それでは、順番に見ていきます。
所得税法における扶養
所得税法における扶養というのは、扶養を受ける人の年齢や数に応じて、扶養者(親)が所得の控除を受けられる制度です。この控除は扶養控除と言うそうです。
たとえば、16歳の子どもが一人いる場合、親は所得から38万円の控除を受けることができます。
で、気になるのは、
親の扶養となっている学生が個人事業主になったら、親の扶養から外れてしまう=親が扶養控除を受けられなくなるのか?
ということ。答えは、
学生である子どもが個人事業主になっても、扶養親族の条件を満たす限り、扶養からは外れることはない。
となります。その条件がこちら。
言葉がむずかしいので、学生かつ個人事業主であることを前提に言いかえると、
となります。
簡単にいえば、学生が個人事業主になったとしても、事業所得や給与所得が48万円を超えない限り、親の所得税法における扶養の対象です。
一般には103万を超えなければOKと言われます。しかし、個人事業主には事業所得が生ずるため、違った条件となるので注意が必要です。
健康保険の扶養
一方、健康保険の扶養もあります。扶養者(親)の扶養となることで、自分は保険料を払わなくて済むという制度です。
この制度、学生であっても個人事業主になると使えなくなってしまうのでしょうか?
答えとしては、
扶養者(親)が加入している保険によって異なる。
になるようです。
自分の健康保険証を見れば、自分の健康保険の種類が分かります。有名なのは、
ですが、会社や業種によっては、健康保険組合として、独自のシステムを持っているところもあります。
加入しているのが国民健康保険の場合
国民健康保険には、なんと「扶養」という概念がありません。国民健康保険では、一人一人保険料を払う必要があります。
ですが、その保険料は所得に応じて決まり、さらには世帯主がまとめて払っている場合もあるので、学生だとよく家族と確認する必要がありそうです。
加入しているのが全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合
協会けんぽであれば、扶養を受けるための条件があります。学生かつ個人事業主であることを前提にすると、その条件はこちらです。
被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)
学生であってもこれらの条件を満たせないと、自分で国民健康保険に加入して保険料を収める必要が出てきます。
ただ、協会けんぽでは、最終的には実態にあわせて判断するようです。仮に年間収入が130万円を超えたとしても、協会が認めれば扶養になれるのかもしれません。
それ以外の保険組合の場合
国民健康保険でも協会けんぽでもない場合は、扶養の条件をよく確かめる必要があります。
一部の保険組合では、青色申告をする人を扶養にできない、などの条件もあるようです。
年収いくらなら扶養に入れるのか、青色申告をしても大丈夫なのか、組合ごとに条件が違ってくるため、自分で調べてみてください。
学生の個人事業主が払うべき税金は?
ここからは学生の個人事業主が払うべき税金について。主に払うべき税金は、3つ。
しかし、これらは収入次第では、払わなくて良い場合もあるようです。順番に見てみましょう。
所得税
所得税は所得に応じて、国に収める税金です。
当然のことながら所得が高い人ほど高い税金を払うことになります。学生であっても、所得税は正しく計算し、納付しなければなりません。
具体的には、(課税所得)=(収入金額)ー(各種控除金額)ー(経費)が0より大きければ、その金額に応じて所得税を払います。
たとえば、課税所得が100万円なら、その5%である5万円を所得税として納付します。
No.2260 所得税の税率|国税庁 (nta.go.jp)
住民税
住民税は、国ではなく、市区町村や都道府県に収める税金です。
自治体によって、住民税制度が異なるため、一概に説明することはできません。一般的には、確定申告をすることで、自治体に収入等が通知され、住民税が決まるようです。
手順6 住民税に関する事項を記入する|国税庁 (nta.go.jp)
消費税
一番身近なのが、消費税だと思います。商品を売るときに、お客様からいただくのが消費税です。
しかし、個人事業主で課税売上高が1000万円以下なら、免税事業者となり、お客様からいただいた消費税を収める必要はありません。
No.6501 納税義務の免除|国税庁 (nta.go.jp)
最近はインボイス制度の導入で、インボイスを発行するためには課税売上高が1000万円以下であっても、消費税を納める必要が出てきました。
でも今回は、免税事業者の僕は調べていないため、省略します。ここから先は、免税事業者であるものとして進めていきますね。
払うべき税金はどう決まる?計算方法
払うべき税金の種類が分かったところで、それはどう計算したらいいのか。これも大きな疑問です。
ここでは所得税について考えてみます。払うべき所得税を計算するには、自分の収入だけでなく、次の2つを知っておく必要がありました。
学生が使える所得控除
一般に、課税される所得金額=収入ー控除金額ー経費、です。学生の個人事業主が使える所得控除は次のようなものがあります。
基礎控除は、誰にでも適用される控除で、控除金額は48万円です。
勤労学生控除は、働いている学生に適用される控除で、控除金額は27万円です。ただし、この控除を使うには条件があり、
No.1175 勤労学生控除|国税庁 (nta.go.jp)
を満たさなければなりません。特定の学校には、小中高、高専、大学はもちろん、授業時間などによっては専門学校等も含まれます。
でも、勤労以外の方法で得た所得が10万円を超えると、この控除は使えなくなります。株で大儲けしたりしたら、勤労学生控除はダメということですね。
給与所得控除は、アルバイトなど給与として支払われる所得に適用できる控除で、55万円です。学生の個人事業主の「事業所得」には適用されません。
そもそも非課税となる収入
一方、所得控除うんぬん以前に、そもそも非課税で申告も必要ない収入もあります。例をあげるなら、
などなど。
No.2011 課税される所得と非課税所得|国税庁 (nta.go.jp)
これらは非課税なので、そもそも所得税計算の「収入」に入れる必要がありません。
宝くじ当選金が非課税なのは有名ですし、親からの仕送りや給付型奨学金は「学資金および扶養義務を履行するために給付される金品」となって課税されません。
だとしても、親からの仕送りとして年1000万円とか常識の範囲を超えるものはいずれバレて、追加徴税されると思います。
学生の個人事業主の確定申告は?
ここまで、扶養、税金、控除について説明しました。僕はこれらを理解するのに、ちょうど1年くらいはかかりました笑。
では、学生の個人事業主の確定申告にフォーカスしてみましょう。
確定申告はしなくて良い場合もある
国税庁によると、個人事業主であっても、確定申告をしなくていい場合もあるようです。
それが、払うべき所得税がない場合です。簡潔にいえば、
課税される所得金額=収入ー各種控除ー経費
が0円以下であれば、払うべき所得税はなく、確定申告をしなくて済みます。僕は去年の確定申告はしていません。
確定申告をするメリット
確定申告をしなくていい場合でも、あえて確定申告をすることもできます。そして、あえて確定申告をすることにも一定のメリットがあるみたいです。
たとえば、
など。税務署が承認した確定申告書は、事業の証明として使えます。実際、銀行口座の開設では、開業届の代わりに確定申告書を提出することもできますね。
また、確定申告をすることで、収入状況をきっちりと把握できます。
確定申告の種類
そして、その確定申告には、なんと二種類あります。青色申告と白色申告です。
青色申告は複雑な記帳が求められ、大変難しいというデメリットがありますが、青色申告特別控除という最大65万円の所得控除を受けられるため大きなメリットがあります。
No.2072 青色申告特別控除|国税庁 (nta.go.jp)
青色申告するには、事前に申請をする必要があるのも注意です。
[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁 (nta.go.jp)
それに対し、白色申告では、そのような控除はありません。でも、白色申告はとにかくシンプルでかんたんなので、楽ですね。
確定申告の作成方法
確定申告は、国税庁の確定申告書作成コーナーというWebサイトでかんたんに作成できます。
が、ここでかんたんに作成するためには、日頃からちゃんと記帳しておく必要があるようです。僕は、この確定申告書作成コーナーが、記帳ツールだと昔勘違いしていました笑。
記帳をかんたんにするなら、とりあえずやよいの白色申告 オンラインを使えば大丈夫です。確定申告書も自動でできあがります。
これはどうする?確定申告に向けた計算の具体例
最後に、僕が調べてくる中でいろいろ疑問に思ったケースについて、具体的に考えてみます。
特に、学生の個人事業主だと、意外とアルバイトだったり、奨学金だったり、事業とは違う収入があったりすることもあるはず。
それでいろいろ考えてみました。※個人が考えたことであり、正確性は保証できません。実際に申告する際に疑問な点は、税務署に確認してください。
収入が事業からのみの場合
これは簡単ですね。
課税される所得金額=事業での収入ー経費ー各種控除
となります。とてもシンプル。
たとえば、100万円の事業からの収入があったとします。経費が30万円で、各種控除を適用すると、
100万円(収入)ー30万円(経費)ー75万円(基礎+勤労学生控除)=-5万円
となるので、所得税は生じません。
アルバイトなどの給与もある場合
じゃあ、ここにアルバイトなどの給与が加わるとどうなるのか、考えてみました。
事業で100万円と給与で50万円の収入があったとします。この場合、給与所得は控除のおかげで0円となるので、結局は、
100万円(収入)ー30万円(経費)ー48万円(基礎向上)=22万円
となります。合計所得金額が120万円なので、勤労学生控除は使えない結果になりました。
No.1410 給与所得控除|国税庁 (nta.go.jp)
宝くじの当選金や奨学金など非課税の収入がある場合
そもそも非課税の収入は、確定申告書には記す必要がないようです。当然、所得金額の計算にも含める必要がありません。
国税庁のホームページには次のように書かれていますね。
非課税所得は、所得金額の計算から除かれますから、非課税の適用を受けるための手続は原則として必要ありません。
No.2011 課税される所得と非課税所得|国税庁 (nta.go.jp)
これは意外でした。。。
まとめ:学生の個人事業主の扶養・税金
以上、学生の個人事業主である僕が、感じてきた疑問に答える形でまとめてみました。
扶養という観点では、学生の個人事業主は、かなり気にすることが多いかもしれません。扶養を外れるにしろ、外れないようにするにしろ、家族と話し合い、制度をよく理解しないとキツイです。
でも税金や確定申告に関しては、他の個人事業主とやることは同じなのではないかなと。日頃からまとめてきちんと計算したいですね。
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